あの子を思い出すとき

 素敵なものをみつけたら、じっと見つめていたくなるでしょう?
 まさにそれなの。
 目の前でころころと、表情がかわる。それがどれだけ幸せな瞳になるのか。
 好奇心に勝てないこの性分を、あなたは愛だと言うけれど。
 これが愛なんて名前をわざわざつけなくても、十分幸せなの。
 それで満足、そしてもっとほしくなる。
 あなたのことをこれからも、大切にします。

                     byなのはさん

2009、7/15


 「あのねあのね」
 「なんだよ。なのはを探しに来たのか、それならあっち・・・」
 「だめなの」
 「なにが」
 「邪魔しちゃだめなの!」
 「はあ・・・お前らの邪魔はしないけど」
 「違うよ、向こうでママ達大事なお話してるの」
 「そうか?そういう風には見えなかったけどな」

 『フェイトちゃん!久しぶりだね』
 『あれ?なのは、今日はここにいないんじゃ・・・』
 『協会の会議は出席しなかったの。
  こっちで最後の模擬戦があったし、見なきゃいけなかったから』
 『そうなんだ』
 『よかった、昨日の連絡だとなんだか元気なさそうだったから』
 『そ、そんなことないよ』
 『何か良いことあったの?』
 『会えたから・・・・』
 『ん?』
 『なんでもない。今日、ヴィヴィオに会いに行きたいな』
 『もちろん。あ、でも行くとヴィヴィオにかかりきりになっちゃうし。少し外で話せそう?』
 『え、でもそれは二人きりじゃなくても・・・』

 「だめだよ!」
 「なんで・・・・」
 「ヴィヴィオには話せないこと、でも話したいこといっぱいいっぱいママ達にはあるから」
 「あ、そういうことか」
 「ん、わかってくれた」
 「お前はどうするんだよ。学校の帰り、あいつと一緒に帰えろうと思ったんじゃないのかよ」
 「もうちょっとしたら自分で家に帰る」
 「そうか」
 「なんで、頭なでるの?」
 「えらい子だからな、ヴィヴィオは」
 「こうするの、大人のひとだけかと思ってた」
 「おい、あたしは子供じゃねーぞ」

2009、7/18


 「もう、切りないな」
 「バルディッシュ!!」
 「フェイトちゃん!」
 「私が注意を引き寄せて、相手を電撃でショートさせる。
  その繰り返しなら、あの数もすぐに片付けられる」
 「うん。動かなくなった機体をわたしが遠距離射撃するんだね」
 「集中して打てば、威力は高まると思うから。一発でいける」
 「ありがとう」
 「それじゃ・・・行くよ!」

 「ふい〜、終わったぁ」
 「なのは!」
 「フェイトちゃん、そんなことよりも皆のことお願い」
 「向こうにははやてが行ったよ。私はさっきはやてに、なのはのことお願いって言われた」
 「信用ないなあ、わたしって」
 「まだ飛べそう?」
 「平気だよ。こっちは片付いたから、向こうの応援にいかないと」
 「そうだね」
 「フェイトちゃん、手を離していいよ。一人で飛べるから」
 「ごめん、なのは」
 「別に、つかまれてるのが痛いってわけじゃないの。ただ」
 「信用、してなくて」
 「フェイトちゃん?」
 「なのはの『平気』を信じられなくて、ごめん」
 「……ううん、それはきっとわたしのせい」
 「目の前にもいるけど、声も聞こえるのに、こうして触れてないと」
 「―――これでいい?」
 「うん・・・・ごめんね、なのは」
 「わたしなら心配でたまらなくなって、思わず抱きついちゃうと思うけど」
 「だって、元気がないなのはにそんなことできないよ」
 「逆だよ、フェイトちゃん。そうされると、わたしが知らない元気が出るときもあるってこと」


 「なんや、あれは」
 「主、怪我はありませんか?」
 「はやてちゃん、なのはちゃん達は無事?早く治療しないと」
 「いや、俺たちはとんだ噛ませ犬になりそうだぞ」
 「うまいこと言えたなぁ、ザフィーラ」
 「はやて!あの二人はっ・・・・・・・・・ん、なんでもねえ」
 「さ、久しぶりにみんな揃ったんや。今日は鍋でもしよか」
 「あたし、はやての料理食べるのひさしぶりだ!」
 「助けにいかなくていいのですか?」
 「そういう雰囲気、読めるくらいになってや、シグナム」
 「すみません・・・どういうことだ、ヴィータ」
 「飯でも食いながら教えてやるよ」
 「ふふっ。さあ、熱々な二人はほおっておいて先に行こか」
           

2009、7/25


 「ヴィヴィオ、忘れ物ない?」
 「うん、ないよ」
 「それじゃあ、お弁当持った?」
 「あるよ、ほら」
 「あとは・・・」

 「うん。本局に用事があったから、急だったけどヴィヴィオの顔を見にね」
 「ヴィヴィオのせいかな。この前、フェイトママとオハナシしたときに泣いちゃったの」
 「ああ、そういえばこの前、通信のことかな」
 「ヴィヴィオは悪くない?」
 「たしかに、泣いちゃったのは驚いちゃったみたいだけど」
 「来てって言うの我慢したんだよ!でも、泣いちゃった」
 「もしも、ヴィヴィオがフェイトママだったらどう思う?」
 「えっとね。あえてうれしい!」

 「きっとフェイトママも同じだよ。だから、ね」
 「そっか、ヴィヴィオは悪い子じゃないんだね!
  よかった、フェイトママに嫌われちゃったらどうしようかと思ったの。いってきます!」
 「・・・いつのまに、そんなに我慢できるくらい大人になったんだね。なんだか、まるで・・・」


 「フェイトちゃん、まだ寝てる・・・」
 「ねえ、ヴィヴィオって、フェイトちゃんにそっくりだよ。すごく頑張り屋さん」
 「あと、頼るのがすごく苦手なところも。そんなところがすごく好きなんだ」

 「それはなのは似だよ」

 「え・・・フェイトちゃん!」

 「邪魔しちゃ悪いかなと思って」
 「もう、起きてるんなら声かけてよ」
 「ちょうど、出かける前に起きちゃったからね。今話したら学校に遅れちゃうかと思って」
 「うそつき」
 「うん、半分くらいは。だってなのは、すごくお母さんだから」
 「どういうこと?」
 「私は、母さんと小さいときそういうふうには過ごしたことがなかったから。
  黙って聞いていたかったんだ」
 「そう・・・」
 「素敵だね、こういう朝って。自分でキャロ達と過ごしていたときには気づかなかったけど。
  こういうの、うん、今日も良い一日になりそう」

 「フェイトちゃん」
 「なのはは昔からそうだね。私が昔の話をすると、いつも手を握ってくれる」
 「だって、フェイトちゃんから頼ってくれないんだもん」
 「私には仲間がいて、ヴィヴィオがいて、なのはがいる。もう、昔とは違うよ」
 「うん・・・あ、でも変わったことがあるよ」
 「なにかな」

 「制服、かけて置かないからシワくちゃだよ」
 「あ、ホントだ」
 「あと、髪の毛結んだまま寝ちゃったでしょう」
 「そういえば」
 「前よりだらしなくなったかも」
 「そ、そうかな・・・すみません」
 「前までは頼ってくれないと助けてあげられないことばかりだったけど。
  最近は自然と、そういうところ見せてくれるから。なんだか嬉しいの」

 「なのは、いいよ。アイロンは自分でかけるから」
 「ふふっ、やっぱり、頼るのが苦手なのはフェイトちゃん似だよ

2009、8/1


 「よいしょっと」
 「高いところだから、気をつけてね」
 「なのは、こっちは?」
 「フェイトちゃんのセンスにおまかせ」
 「それは責任重大だ」
 「そんなにマジメならなくても。こういうのは、準備も楽しんでやるんだよ」
 「そうなんだ」
 「あれ、こういうの初めて?」
 「母さんの誕生日は、お兄ちゃん達がしきってたから。自分から何かを作るってあまりなくて」
 「そっか。それじゃ、せっかくだから思い切り好きなように飾ってほしいな。
  わたし、フェイトちゃんのやりたいこと手伝うよ」
 「え、でも私初めてだし」
 「もう、だからそんなに眉間にシワ寄せないでよ」
 「あ、なのは。急に顔を近づけたら!」

 「いたた・・・・フェイトちゃん、大丈夫!?」
 「なのはは大丈夫みたいだね、よかった」
 「フェイトちゃん、わたしをかばって体重かけないように倒れてきたでしょう」
 「最近太っちゃったからね。大丈夫、うまく手をつけたよ」
 「わたし、受け止めようとしたのに」
 「なるほど、だから倒れたときにこの体勢になったんだ」
 「ちょっとくらい、体重預けてくれても」
 「そういうわけにはいかないよ」
 「そっか・・・ありがとね。いつも守ってくれて」

 「・・・・・・・よっと」
 「フェイトちゃん?」
 「準備、続きしようよ」
 「どうしたの」
 「はい、これお皿。向こうにならべてね」
 「あ、照れてる!」
 「なのは、くっつかないで」
 「こっち向いて?」
 「早く準備しないと、ヴィヴィオが帰ってきちゃうよ」
 「顔真っ赤だよ、フェイトちゃん」


 「今日ね、ママ達がお祝いしてくれるの!」
 「そうなんや。そういえば、今日はヴィヴィオがこの家に来た日ってなのはちゃんが言うて・・・あ」
 「どうしたの、はやて?」

 (なのはったら、あんまりからかうと私も怒りますよ)
 (本当?でも怒ってもそんな可愛い顔じゃあ迫力ないなぁ)
 (可愛いって、また平気でそういうことを・・・)

 「いや、扉の前から『今開けたらあかん』て言われているような気が」
 「?」
 「ヴィヴィオ、きっとご馳走ママ達が作ってくれてると思うんよ。
  だから、お腹すかしにも少し、散歩でもしよか」

2009、8/10

 「ママ、これ読んで」
 「えっと・・・ヴィヴィオ、これは誰から借りたのかな?」
 「はやてだよ。はやてのお家っていっぱい本があるの、どれでも借りていいって言ってた」
 「はやてちゃん、確認しなかったんだね・・・」
 「ねえ、ママ。読んで」
 「おやすみ前に読むようなものじゃないけど。まあ、いっか。ヴィヴィオにはよくわからないだろうし」
 「なにが?」
 「それじゃ、始めるよ」

 「ただいま、なのは」
 『首筋にはうっすら汗が滲んでいて』
 「うん、今日はちょっとライトニング隊の訓練に付き合ってたんだ」
 『綺麗なその手で額をふき取る』
 「え、綺麗って・・・」
 『少しだけ近づいてもいいですか?』
 「あ、えっと。よくわからないけど、汗かいているから、ちょっと困るな」
 『あなたには触れません。あなたの匂いに触れたいのです。』
 「えっ・・・匂い!?どうして?」
 『漂う気配が花の香りより美しくて』
 「そういう答えが返ってくるとは思わなかったな・・・・」
 『そばにいられるだけで幸せです。私はあなたのこの時を守ります』
 「あ・・・う・・・・でも、
  先陣を切ってなのはを守るのは私の仕事だし、役目だし、やりたいことだし・・・」
 『なぜ、戸惑うのですか?あなたが望めば、私はあなたのこころに触れません』
 「そんな!いつもみたいに、仲良くしようよ」
 『では、一言おっしゃってください。たった一言でよろしいのです』
 「な、なにを言えば良いのかな」
 『わたしを守ってほしい、と』
 「それは、あの」
 『そう・・・・・・・ひとこと・・・だけ・・・』
 「私は・・・守る側だし・・・・・」

 「うぅん」
 「なんていうか。でも、もしなのはが言って欲しいっていうなら・・・」
 「ほえ、フェイトちゃん?帰ってたの?」
 「え?」
 「ごめん、半分寝ながら読んでたから。気がつかなくて」
 「本を・・・読んでたんだ。そうか、なるほど、うん」
 「はやてちゃんから借りたみたい。待ってて。
  今日はお夕飯わたしが作ったんだよ。フェイトちゃんの分もあるから、すぐ用意するね」
 「・・・・・・・・はあ」
 「珍しいね、ため息なんて」
 「うん、今日はちょっと大変だったからね・・・。なのは、ご飯手伝うよ」

 「はやて。まだ起きてる?」
 「フェイトちゃんか。どうしたん、こんな時間に」
 「まだ、こういうのはヴィヴィオには早いと思うな」
 「あかん!もしかして、それ家に帰って読んでしもた?」
 「お陰で大変混乱しました」
 「それは大変失礼しました。でも、悪い話じゃなかったやろ」
 「こういうのたしか純文学っていうだよね」
 「まだシリーズでたくさんあるから、貸してあげよか?」
 「・・・・・・・・・うん」
 「ほな、明日持ってくからな。待っといてや」

2009、8/16


 「あれ、ヴィヴィオは?」
 「うん、学校のお友達の家に行くって」
 「そう。それじゃあ、今日はなのはと二人きりだね」
 「そうだね」

 「・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・なのは」
 「なあに?」
 「どうして黙ってるの?」
 「フェイトちゃんこそ」
 「なんだか、こういうの照れくさいね」
 「うん。たまに仲のいい人と会うと、ね」

 「ヴィヴィオは、相変わらずなのかな」
 「それがね、最近フェイトちゃんの話がでてもだだこねないんだよね」
 「うれしいけど、ちょっと寂しいかな」
 「気を使ってるんだと思うよ。去年、通信のときに泣き出しちゃったし」

 「それでも、離れている好きな人からわがまま言ってくれるのは嬉しいよ」
 「・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・」
 「にゃはは、なんか、改めてこうなると、なに話していいかわかんないね」

 「なのはもいいんだよ?」
 「ん?」
 「わがまま言っても」
 「うっ」
 「なのはのことも好きだよ」
 「フェイトちゃん、昔からすぐにそういうこと言うよね」
 「うん、ずっと昔から思ってることだから」

2009、8/25


 「うーん・・・・・」
 「どうしたの、フェイトちゃん?」

 「男の人って、どんな服がかわいいと思うんだろう」
 「え、ええ!?フェイトちゃん!?」
 「あれ、なにかおかしなこと言ったかな」
 「だって、今までそんなこと・・・ううん、
  もしかしたら、仲が良いから話しにくかったのかもしれないよね、でもでも」
 「あの、なのは。落ち着いて?」

 「こほん。じゃあ、その立食パーティーでお洋服を着るんだね」
 「印象を良くした方が、後々都合が良くなるかもって思って。
  あの協会自体すごくかたくなで、身内以外の人を話し合いに参加させてくれないみたいなんだ」
 「局の顔になるってことは。フェイトちゃん、偉い人になったんだね」
 「そうかな。やっかいごと頼まれてるだけかも」

 「フェイトちゃんの、可愛いかぁ」
 「アルフがね、少し可愛らしくすれば、向こうの気持ちも和んで話もできるんじゃないかって」
 「たしかに、権威を振舞うあの場所だからこそ。警戒しないで、話しかけやすいかもね」
 「でも、言い出した本人が、
  『フェイトは美人なんだからなんでも似合う』とか言って、手伝ってくれないんだよ」
 「ふふっ。それは、一理あるかも」
 「もう、なのはまで。そうやってはぐらかす」

 「フェイトちゃん」
 「なに?」
 「笑ってみて」
 「ど、どうして急に」
 「はい、チーズ」
 「あ・・・・うん、チーズ」
 「ほら、良い顔だよ」
 「携帯で撮ったの?」
 「これが、いちばん可愛い」
 「あ・・・・・」

 「いつも通りでいいんだよ。でも、できるなら、
  その人のこと好きになるかもって思って、話しかけたら良いんじゃないかな」
 「なのは・・・・」
 「笑顔で話したら。そしたら、どんな出会いだって、仲良しになるきっかけになるかもしれない」
 「うん、前の私達がそうだったみたいに」
 「参考になりました?」
 「もちろん。大変、参考になりました」

 「それじゃ、笑顔の練習でもしてみようか」
 「なんか、改めてそういわれると、できないよ」
 「じゃあ、これね。あの協会の偉い人のマネ『むふー、君がフェイトクンかね?』」
 「ぷっ!そ、そっくり・・・・」
 「そうそう、この調子で。『フェイトクン、君の活躍は聞いてるよ』」
 「は、はい。ありがとうございます。私も会長のご活躍は・・・・・・」

2009、9/1


 「なのは、ただいま」
 「・・・・・・・」
 「なのは、ヴィヴィオがいないみたいだけど」
 「ヴィヴィオは、はやてちゃんのお家だよ」
 「そ、そう・・・・。ねえなのは、どうしたの?」

 「――フェイトちゃん、今日の会議は休むんじゃなかったの?」
 「あ、そのことなんだけど。体調が少し戻ったみたい。だから、顔出すだけでもって」
 「嘘ついてる。顔出すだけって、フェイトちゃんはそんなことしないでしょ」
 「そ、そうだね。少し話もしたかな」

 「食事はもう、すませたの?」
 「ううん、なんだか食欲なくて」
 「食べてないの?」
 「一口か二口、つまんだよ。あと野菜ジュース」
 「どうしてそんなこと、しちゃうかなぁ」
 「なのは、もしかして心配してくれてる?」
 「フェイトちゃん、わたしが無理してるひと見るの苦手なの知ってるよね」
 「あ・・・・・えっと・・・・無理をした、わけじゃなくて。なんといいますか」

 「わたし、朝からずっと寝てると思って」
 「ごめん、なのは。心配かけて」
 「もう、どうして大丈夫だと思ったの?」
 「もしかしたら、なのはと少し、無茶するって感覚が違うのかな」

 「昔から熱があっても平気な方だったとか」
 「ううん、平気じゃなかっと思う・・・
  でも、前は食べないでロストロギア探しに行ったり、その・・・母さんともけんかしたりとか」

 「うん・・・そっか」
 「食べたり寝たりすることじゃなくて、アルフとお話する方が、なんだかすごく元気が出て」
 「そうだったんだ・・・」
 「それにほら、私は人の体から生まれた素材じゃないし、
  そういう意味でも身体的能力が一般の人に比べて悪くないというか」

 「フェイトちゃん!」
 「え、なのは・・・・?」

 「どうしてそんなこと言うの?どうして、自分はわたしと違うとか言うの?違うでしょう?」
 「でも、なのは。それは事実だから」
 「そうじゃないっ。事実だけど、そんなの間違ってるよ!」

 「なのは、ごめん。また怒らせちゃって」
 「今日はフェイトちゃん、謝ってばっかり」
 「だって、悪い気分にさせちゃったから。
  あ、今から寝るよ。その後なら、なのはは普通にお話してくれるよね」

 「そうじゃ・・・ないよ・・・」
 「・・・・・・・・・ごめんね?泣かないで、なのは」
 「ううん・・・わたしが悪いの・・・違うの・・・」


 「フェイトちゃんは、なんにも知らないんだよ」
 「そうかな」
 「意外と、そういうところは、子供のままなのかもしれない」
 「うん。大人になったと思ってた」

 「私はリハビリで復帰してから、フェイトちゃんが無理しないでって言葉すごくうれしくて」
 「うん、そんなこともあったね」
 「それで、無理したら誰かを傷つけちゃうんだって思って、今は正直に話してるの」
 「そういえば、なのははあれから甘え上手だ」
 「フェイトちゃんったら、今はまじめなお話なの」

 「わかったんだ。仲のいい人を心配してるのに、
  自分はあなたと違うから大丈夫だなんて、突き放されたらつらいよね」
 「よーやく、わかってくれた!」
 「わたしもなのはの気持ちになったらわかるはずなのに、ごめんね」

 「フェイトちゃん、わたしは出会ったときから、こんな普通の女の子と戦うなんてと思ってたよ?」
 「私が、普通の女の子?」
 「笑ったらどんな顔するのかなとか、どんなときに悲しくなって泣くのかなとか」
 「えっ、あの時から!」
 「あれからお友達、たくさんできたはずなのに。こういうこと、全然お勉強不足です」
 「はい、ごめんなさい」
 「ちなみに、なのははアリサちゃんと小学生のころに、同じようなことを言われました」
 「じゃあ、なのはの方が大人だ。なのは、ヴィヴィオがいないのは、私のせいかな?」
 「絶対帰ってきたらケンカしちゃうと思って」
 「なるほど。こういうの見せるのは、教育上よろしくないですね」
 「誰のせいなのかな?」
 「私のせいです」

 「ふふっ」
 「やっと笑ってくれた!はあ・・・よかったぁ」
 「え、フェイトちゃん、なのはを笑わせたくてあんなこと言ったの?」
 「え、違うよ。そうじゃなく、えっと・・・・」
 「冗談、ちょっとからかっただけだよ」
 「そんな、なのは。今日はもう驚かせないで。
  私、なのはに嫌われちゃったら・・・嫌われたら、つらいよ」

 「泣かないで。前にも言ったけど、嫌いになんてならないよ。でしょ?」
 「うん・・・・・・」
 「でも、泣いてるフェイトちゃんも嫌いじゃないんだけどね」
 「え?」
 「フェイトちゃん、高町なのはは、フェイトちゃんの全部と仲良しになりたいです。いいかな?」
 「う・・・うう・・・・なのはぁ」
 「本当、今日はヴィヴィオに見せられないなぁ」

2009、9/24


 「今日ね、研修の子たちの相手してしてきたんだよ」
 「見ない間、すっかり教官の姿がいたについたね」
 「そんなことないよ」
 「なのは、どうしたの?」
 「え、なに?フェイトちゃん」
 「ねえ、なのは。本当は話したいこと、違うことなんじゃない?」
 「・・・・・・・・・うん」
 「とりあえず、話してほしいな。話せるように心が落ち着くまで、ずっと待ってるよ」
 「フェイトちゃんてさ、たまにそういうかっこいいこと言うよね」
 「思ったこといってるだけだよ」

 「あのね、わたし。すごい魔法があるから、
  みんなが頼ってきてくれるけれど。実際の任務って本当はこころの強さだと思う」
 「うん、そうだね」
 「痛いくらい感じてきたのに。なのに、教えられるのは実践だけで・・・伝えるってむずかしいね」
 「なのは、本当にみんなのことを大切にしてるんだね」

 「ただいまー。あ、フェイトママだ!」
 「おかえり、ヴィヴィオ。久しぶりだね」
 「ヴィヴィオ、おやつあるから手を洗っておいで」


 「はーい。ねえねえ、フェイトママ」
 「なにかな」
 「ヴィヴォオ、変わってるかな?」
 「え、どうして」
 「みんなと違って、魔法がつよいって先生に言われたの」
 「ヴィヴィオ・・・・」
 「みんなと違うのかな。ヴィヴィオだけ」

 「同じだよ。この前聞いたよ、ヴィヴィオは魔法の練習中に怪我した子を助けてあげたって」
 「うん、だってみんなと同じ練習に入れないから」
 「同じとか、違うとかそういうことじゃなくて。
  そういうやさしい魔法がかけられる人がほんとは強いんだ」

 「そうなの?」
 「そうだよ。ほら、見てごらん?」
 「なのはママ、またおやつ作るの失敗しちゃったんだね・・・まっくろこげ」
 「ああやって、忙しいのにおかし作ってくれるママだから、ヴィヴィオを助けられたんだと思う」
 「うん・・・・・」
 「そういう人に、なれたらいいね」
 「うん!なりたい!」

 「ママー!」
 「わっ、なあに。ヴィヴィオ、手はちゃんと洗ったの?」
 「ママの魔法ってすごい、ヴィヴィオも使いたい!」
 「え・・・ヴィヴィオ、まだレベルを解除するのは早いでしょう」
 「ぶー、違うもん」

 「ヴィヴィオ、あの魔法はね、かけられた方にしかわからないんだよ?」
 「そうみたーい」
 「え、なになに。二人で何はなしてたの?」
 「ヴィヴィオがね、なのはそっくりのやさしい魔法使いになれたらいいなって話だよ」

2009、流れ星に恋した日


「あ、流れ星」
「え、どこどこ」
「なのは、見逃しちゃった?」
「ざんねん、また出てくるかな?」
「どうだろう。出てくるといいね」

「フェイトちゃんはどんなお願い事したの?」
「ああ、願い事・・・」
「しなかった?」
「そういえば、子供のころ。アルフがそんなこと言ってたなと思って」
「あ、わかった。フェイトちゃんてば、
 『瞬間にそんなことはできないし、まして意味ない』とか思ってたんでしょ」
「すみません。かわいくない子供で」
「うふふ、でも今はどう?」
「そうだね、今はこの子たちが元気で育ってくれるといいな」
「ヴィヴィオったら、たまに三人で出かけたからはしゃいじゃったね」
「よいしょっと」
「おぶるの代わろうか?」
「いいんだ。このままがいいから」
「うん。わかった・・・・」

「きれいな空だね。あの頃は余裕がなかったけれど、ちゃんと見上げると星がいっぱいあるんだね」
「ここはちょっと都会から外れているから、住んでいるところよりきれいに見えるね」
「いつから空をちゃんと見えるようになったのかな」
「わたしは、フェイトちゃんと離れてからかな」
「そうなの?」
「よく、名前を読んでくれた海の見える場所からね。フェイトちゃん元気かなあって」
「そっか・・・・うん・・・そうなんだ」
「どうしたの、にやにやして。」
「ありがとう、なのは。きっとその気持ちは伝わってた。
 あれから、ひとりになっても寂しくなかったから」
「念話って、そんな遠い場所まで伝わったっけ?」
「かわいくないですよ、なのはさん?」
「うふふ、ごめんなさい」

「今でも変わらないよ、フェイトちゃん」
「うん」
「離れて暮らしても、ずっとひとりじゃないから」
「うん・・・・」
「何かあったらいつでも呼んで?」
「なのはは、いつも私の思い出を暖めてくれる。ありがとう」
「これからも、あったかい思い出いっぱいつくっていこうね」

2009、アリエルの天使が訪れた日


「フェイトちゃん!」
「なのは、前は私が守るから」
「違うの、あれはわたしたちと同じ・・・・・」
「だめだよ。やさしいなのははこういう時に出しちゃ。それはいざというときにとっておかないと」
「でもフェイトちゃん、まだ向こうはわたしたちとあんまり変わらないくらいの・・・わっ。危なかったぁ」

「なのは、前に集中して」
「ロストロギアなんて、研究生が盗んで良いいものじゃないのに」
「一般の学生が、いくら魔法力があるからって使って良いものじゃない」
「倒しちゃうの?」
「わからない、でも・・・最善は尽くしたい」
「・・・・・・・」
「なのは、何度も言うけど」
「わかってるっ。それでも、あきらめたくない」
「なのは・・・・」
「フェイトちゃん、お願いがあるの」
「聞けないよ。ううん、きっと聞いちゃいけないお願いだよ」
「それでも、わたしたちがやらなきゃ。
 もしかしたら、わたしとフェイトちゃんみたいに、なれるかもしれない」
「―――ずるいよ、なのは」

「聞いてくれないかもしれないけど、言うね」
「うん」
「あの子が魔法力が尽きるまで、魔法を使わせてあげるの。
 細かい波動砲はフェイトちゃんが防いで、強力なものはわたしが防ぐ」
「あの子はわかってくれるかな」
「思い切り、全力全快でぶつかって。どうして盗んでこんなことをしているのか、聞くの」
「どうしてそこまでするの?」
「もう、自分の力を自分を傷つけたり、
だれかを傷つけたりしないために。わたしたちが、いまやらなきゃ一体誰が・・・うっ!」

「なのは!大丈夫!?」
「全然・・・平気・・・・・ロストロギアを手放したとしても、人を傷つけるものは世界にたくさんあるから」
「私が母さんに言われた、叱られたことばみたいに・・・・」
「うん。どうしてそんな気持ちで使っちゃうのか。
 しっかり向き合えば・・・ううん、わたしたちと一緒なら向き合える!」
「痛みはまだある?」
「痛くないよ。子供の頃、フェイトちゃんとやり合ったときのほうがずっと。
 こころがすごく痛かった・・・」

「・・・・・攻撃はするよ。その方があの子が魔法をたくさん消耗してくれるから」
「でもっ!」
「じゃないと。応援がきて、実力行使で掴まえると思うから」
「フェイトちゃん」

「なのは・・・・向こうは私達より体力もある、だいぶ若い子だけど」
「まさか。まだまだ現役、やれるよ」
「忘れてなんかいない。私のちからが、誰かの役に立って使えるのは、なのはのお陰だったね」
「お互い様だよ、フェイトちゃん?」
「ごめんね、なのは。やっぱり、今のままのやさしいなのはが、大好きだよ」

2009、10/26


「ただいま・・・あれ」
「むーん・・・お帰りフェイトママ」
「起こしちゃったね、ヴィヴィオ。ほら、お布団に入って」
「なのはママ、ずっと待ってたの」
「ヴィヴィオも待っててくれたんだね、ありがとう」
「ママ、フェイトママとお話したいって」
「なんだろう。なにかあったのかな」
「ううん、お話がしたいだけ・・て・・・ふわぁ」
「おやすみ、ヴィヴィオ」
「おやすみなさい」

「話したいことってなんだろう」
(お帰り、フェイトちゃん)

「なのは、びっくりした。念話で話してくるなんて」
(うん、なんとなく)
「ごめんね、私を待ってたみたいだけど。今日なにかあった?」
(なにもないよ、たぶん)
「本当?」
(なんとなく、言いにくいから)
「だから、目を閉じたままなの?」
(うん・・・・・・)

「なのは、話して?」
(手、冷たいね。わたしの方があったかいよ)
「ほんとだ。なのはの方が、あったかいね」
(なんでもないの、ほんとだよ?)
「わかった」
(なんでもないんだけど、理由もないんだけど)
「どうして、いつも話してるよ?」
(なんにも考えず話したいなって。なんでだろうね)

「ふふっ」
「あ、フェイトちゃん笑った!」
「ようやく、なのはの声が聞けた」
(やっぱりこっちにしようっと)
「最近、色々いそがしかったみたいだし。それにヴィヴィオの手続きもあったから」
(疲れているわけじゃないんだよ?)
「たまには頼ってねって。いつもなのはから聞いてるけど。今回は逆かな」
(そうかな?)
「でも、新しいことを始めるのは、どんなときだって大変だから」
(・・・・・・うん)
「そういうときって、誰かに話したくなるよね」
(フェイトちゃんも?)
「前に、ね。私は学校って行った事なかったから。なのはによく、学校のことはなしてた」
(ふふふっ、同じクラスなのにね)
「あの頃、本当に話を聞いてくれてうれしかったんだ。
 でも思うと、なのはは私のこと見守ってくれたんだよね」
(だって、ほおっておけなかったんだもん。フェイトちゃん、いろんなことが初めだったみだいだし)

「それじゃ、私の気持ちと同じだ」
「・・・ごめんね、フェイトちゃん。わたしの方がそうしてたのに」
「気にしなくて良いんだよ。むしろ、話して欲しいんだ。なのはみたいにうまく聞けないけど、私・・・・」
「フェイトちゃん、もう十分だよ」
「そうなの?これでいいの?うまく励ませたかな」
「すっごくうれしい。また・・・手を握ってね?」
「うん、私で良いなら」
「私も。これからもそういうことがあったら、手を握るよ。フェイトちゃんのために・・・」
「うーん・・・ママ・・・むにゃ」
「もちろん、ヴィヴィオのためにもね」

2009、11/15


『なのは・・・・』
『うん・・・・・』
『また、名前を呼んでもいいよね?』
『もちろんだよ!』
『大人になっても呼んでいい?』
『いいよ』
『そばにいてもいい?仲良くしててもいい?』
『わたしもそばにいたいよ、仲良くしたいよ』
『大人になるって、どういうことかわからないけど、
 この気持ちだけあれば、十分私は生きていけると思うから』
『いつでも呼んで。フェイトちゃん、わたしの名前で元気になるなら、いくらだって呼んでね』

「あのね、なのは・・・」
「あ、ヴィヴィオ寝たかな。ちょっと様子見てくるね」
「私たちが映画館から出る前に、先に帰ってるから。寝たんじゃないかな」
「うん・・・・そうだね」

「なのは、映画のことだけど」
「いけない、お洗濯畳まなきゃ。今日、慌てて出かけちゃったから」
「一緒に畳もうか」
「悪いよ、フェイトちゃん」
「前はいつでもいっしょにしてたよ?」
「そうだけど・・・・・・・・」
「ふふっ、なのは面白い」
「もう、フェイトちゃんはどうして普通なのっ」
「初めはなのはと同じ気持ちだったとんだけど。どうしてかな。今は、ちょっとからかいたいかも」
「フェイトちゃん、たまにそういうところ、子供っぽくなるよね・・・」

「ねえ、なのは」
「何度も名前を呼ばなくたって、聞えてるよ」
「あのね。こうして、昔の自分たちをみて、恥ずかしがって、すごくうれしいんだ」
「にゃはは、わたしは恥ずかしい方がちょっと大きいかも」
「その笑い方、久しぶりだね」
「あ、いけない。もう子供じゃないし、高校生のころくらいかな。気をつけてたの」
「何度も救われたよ、私の前で笑ってくれて。どんなときだって・・・」
「ストーップ!わわっ、なんか急に恥ずかしくなってきた」
「どうして?恥ずかしいのは初めからだよね?」
「そういう恥ずかしさとかじゃなくて、もっと・・・もうっ、フェイトちゃん!」

「ごめんね、なのは。でも昔の気持ちを思い出したから、言いたくてたまらなくなって」
「どういう気持ち?」
「名前を呼ぶだけで、胸がいっぱいになったときの気持ちだよ。呼んでもいいよね?」
「いいけど・・・ううっ。どうしてフェイトちゃんは昔からそのままなんだろう・・・・」
「なのは、なのは、なの・・・・・」
「やっぱりだめっ。とりあえず、今日はここまで!」
「前は泣いて喜んでくれたのに・・・。大人になるって、こういうことなのかな?」

なのフェイリンク



思いつきで描いていったなのフェイSS集です。誤字脱字があったら教えてください。
そして、お話の感想が胸に出てきたのなら、想いを貯めておくのは身体によくないから、
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