あの子を思い出すとき

 恋ですか?いいえ、わたしたちは恋から愛を覚えるのではなく、
 愛から愛すること、覚えてしまったのです。
 だから、きっと燃えるような恋はこの愛にはかなわないかもしれない。
 でも、いとおしい者が目の前にたくさん見えるこの現実を。
 わたしは愛してやまないのです。
 ありがとう、愛を教えてくれたいとおしいひと。
 あなたのことをこれからも、大切にします。

                     byフェイトさん

HP開設記念・新作


 「フェイトちゃんてさ、すごく大人しいよね」

 「え、どうして」
 「きっとすごく、言いたいこととか我慢できるのかなって」
 「わたし、まだ子供だよ。言いたいこととかはっきり言えないし」

 「私なんかぜーんぜん、だめ。
  小学5年生になってもまだ、ヴィータちゃんに子供扱いされる」

 「なのは、クリームついてる」
 「あ、ほんとだ」
 「なのはったら。いつもここでショートケーキ食べるとき、
  鼻の上にクリームつけちゃうよね」
 「いつもじゃないもん」
 「そうかな?」
 「・・・・・んにゃ、また付いちゃった」

 「ふふっ。なのはは、そのままがいいよ」
 「あれ、待って。言いたいことがあっても・・・?」
 「うまく言葉にできないから。なのはみたいになれたらいいのに」

 「うーん」
 「あ、このショートケーキ。なのは上に乗ってる苺好きだよね。はい、どうぞ」
 「うーん」
 「そのお菓子についてるミント、なのは苦手だよね。私が代わりに・・・」

 「ストーーップ!」

 「え、なのは?」
 「フェイトちゃん、やっぱり言いたいことが言えないのはよくないよ」
 「うん・・・そうだね」
 「でも、言いたいことをきちんと我慢できるフェイトちゃんも好きなの」
 「そ、そうなんだ・・・」
 「でもでも、やっぱり。
  いつも言わないでいたら、大事なとき。すごく後悔しちゃうと思うの」
 「よく、わかるよ」

 「フェイトちゃんの紅茶もーらい!」
 「あ、なのは・・」
 「フェイトちゃん、この紅茶大好きでしょう」
 「え・・・・」
 「どうしようかなぁ。
  これデパート人気のお茶だから、買いに行ってもないかもなぁ」
 「あ・・・えっと・・・」

 「ん?」
 「返して・・・それ、あとで飲むの・・・楽しみに・・・してたの」
 「はい、どうぞ。召し上がれ。
  ちなみに、これどこのスーパーでも売ってるから。後で教えるね」

 「なのは、ずるいよ!」
 「ふふふ!ねえ、フェイトちゃん。
  フェイトちゃんは好きなものとか苦手なものとか知ってくれてるけど、
  なのははフェイトちゃんのことまだ、何も知らないと思うんだ」
 「でも、なのは私のこと知らなくても仲良くしてくれた」

 「今は、仲良くなったから、
  もっと知りたいんだよ。友達ってそういうものでしょ?」
 「そうだね。私もそう思う」
 「だから知りたいの。もう、わたしが勘違いして
  フェイトちゃんを傷つけちゃわないように、好きな時も苦手な時も教えてね」

 「ありがとう、なのは。これからはなるべく、色んな気持ちを言葉にしていくね」
 「うん!」
 「そっか・・・言葉にしていくのも大切だよね・・・」

 「あ、お母さん!ありがとう、紅茶持って来てくれたんだね。ちょっと待ってて、
  空のカップは・・・」
 「あの!なのはいいかな。私、実はっ・・・」
 「なあに?」

 「本当はショートケーキ、苦手なの!」

2009、7/1


 「なのは」
 「あ、フェイトちゃん!」
    
 「どうしたの、なのは」
 「よくわからないんだけど・・・・ヴィヴィオを怒らせちゃったみたいで」

 「珍しいね、喧嘩なんて」
 「そんなことないよ。
  喧嘩はよくしているし・・・にゃははは、少し言い過ぎちゃったかな」

 「なのは、心配しないで」
 「平気だよ。今お茶出すから待ってて」
 「なのはがそうやって笑うのは、自分に嘘ついてるときだから」

 「・・・・・・・さすが、フェイトちゃん」
 「長い付き合いですから。だから、いつでも色んなことを話してね」

 「それじゃあ、早速だけどお願いがあるの」
 「うん」
 「ヴィヴィオが帰ってきたら、
  焼きたてのおいしいクッキーをあげようと思うんだけどね」
 「わかった。手伝うよ」


 「ありがとう。あと、本当の気持ち、言わなくてごめんね」
 「気にしないで、なのは」
 「ん?」
 「なのはが嘘をつくときはきっと大切な理由で何かを傷つけたくない時だから」
 「それじゃあ、フェイトちゃんに嘘をついてもいいの?」

 「うん、なのはの嘘はいつだってやさしいよ。
  でも、なのはに嘘をつくのはやめてね」

 「フェイトちゃんてさ・・・・」
 「どうかした?」
 「何時から戦闘魔法以外で、
  わたしを負かしちゃう魔法が使えるようになったんだろう・・・」

2009、7/3


 「おい、テスタロッサ」
 「はい、なんでしょう?」

 「シャツの襟が上がったままだぞ、直した方がいいんじゃないか」
 「あ、本当だ。ありがとうございます」
 「今日はあいつと新人たちを鍛える日だったな、その前に紹介式があるそうだ。
  公式の制服は持ってきたか?」
 「そういえば・・・忘れてしまいました。代わりにこの前着ていたのをそのまま置いてあるので、
  少し汚れていますけれどそれを着ます」
 「あとお前、履いている靴。形は似ているが、もしかいたら片方ずつ違うんじゃないか?」
 「気づきませんでした!茶色と黒って少し似ていますし・・・」

 「まったく」
 「なんといいますか。こんな姿をお見せすると何も言い返せません」
 「お前はいつもそうだな」
 「いつも・・・でしょうか・・・・」
 「あいつとたまに会えるのが、そんなに嬉しいか?」
 「そんな!そんなことありませんよ!」
 「そうなのか。そんなことないのか」
 「いえ・・・そんなことはありますけれど・・・もう、言葉って難しいですね」

 「一緒に居た頃はそんなことはなかっただろうに」
 「そうだったかもしれません。いつも会えていたのが、当たり前だったし」
 「もうあれから10年以上になるんだな・・・月日は早い」
 「はやては元気ですか?」
 「少し忙しいようだ。あまり連絡を取っていない」
 「心配ですか?」
 「いいや。あるじは何かあると、用事もないのに私達と連絡を取りたがるからな。
  お前と違ってわかりやすくていい」
 「それ、どういう意味です?」
 「言ったとおりだ」
 「でも、なんだかいいですね、そういうの」
 「心配と言ったら嘘になるが。しかし、我々には共に過ごした絆の想い出がある。
  だからこうしていられるのだろうな」
 「わたし、我儘なんでしょうか・・・・・」
 「お前は少し、我儘になるべきだな。ヴィータを少し見習え」
 「シグナム、変わりましたね」
 「お前もな」

 「あ、なのは!あそこを歩いているって事は、もう会議終わったのかな」
 「残りの報告は私がやっておく。
  お前はあいつと新人たちのしごき方についてでも、話し合って来い」
 「いいんですか?」
 「ただし、今度あいつと会ったら、次に連絡する予定くらいつけておけよ」
 「シグナムったら」
 「それと、会うたびにそんなんじゃ仕事にならん。これからはよくよく、連絡しろ」
 「はい・・・ごめんなさい・・・」

2009、7/5


 「フェイトちゃん、この前あったことなんだけど」
 「これ、昨日通信で話した資料。まとめておいたから」
 「ありがとう。それでね」
 「これは会議で通った新人教育企画と、その後の進路申請規約書だよ」
 「ありがとう」
 「それでこれが、これから出す案件のひとつだから・・・・」
 「フェイトちゃん、ストップ!」
 「はいっ」

 「どうしちゃったの。いつもはすぐ『なのは元気?』とか『ヴィヴィオはどう?』って聞くのに」
 「そうだね・・・」
 「何か隠してる。そういうの無しだよ、そうでしょう?」
 「うん。ごめん、なのは」
 「どうしてちゃんと話してくれないのか、教えて」
 「―――笑わない?」
 「笑わないよ」
 「今日は・・・わたし、変だから」
 「どうして?」

 「前髪・・・・切るの失敗しちゃって。
  分け目を変えて隠したんだけど、顔をあげるとわかっちゃうから」

 「・・・・・・・・・へ?」
 「なのは?」
 「・・・うん・・・そうだね・・・そういえばちょっと、短い・・・ぷっ」

 「なのは!笑わないって言ったよ!」
 「だってだって、フェイトちゃん。まさかそれ、朝から悩んでたの?」
 「なのはなら、絶対に気づかれると思って。仲の良い人に見られるのが、一番恥かしい」
 「そっかそっか」
 「なのは、どうして頭をなでるの?」
 「なんか可愛いなと思って。嫌だった?」
 「嫌じゃ・・・ないけど」
 「似合ってるよ、それも」
 「ウソツキ」
 「ふふっ、ほんとだってば」

 「ああ、もう。なんだかよけいに恥かしくなってきた」
 「なんでそんなこと気にしちゃったかってこと?」
 「初めからいつもより短いことを先に言えばよかったなって」
 「それじゃつまらないよ」
 「つまらなくてもいいです」
 「すねないで、フェイトちゃん。そういう意味じゃないの」
 「どういうこと?」
 「久しぶりに会って、どこが変わったかお互い見つけあうのを、私、楽しみにしてるんだ。
  そうすれば、会えない時間も結構楽しいし。なんてね」
 「・・・・そんなこといっても、笑ったことは帳消しにならないよ」
 「あれ、やっぱりダメ?」

 「ねえ、なのは。今度会うときはどんな風に楽しく話せるんだろうね」
 「楽しみだね。あ、でも会ってる時に次に会う話をするのはおかしいかなぁ」
 「なのはも変わったね」
 「そうかな、相変わらずだよ」
 「今日は、いつも気持ちを素直言うなのはじゃなくて、
  ホントのことをそうやって笑ってごまかしちゃうなのは」

 「ん?」
 「もう一度言おうか、『どこが変わったかお互い見つめあうのを』・・・・」
 「わーーー!改めて言わないで恥かしい、フェイトちゃん!」
 「さっきのお返しだよ」

2009、7/10


 「たぶん、私がいなくなっても大丈夫だよね」
 「フェイトちゃん?」

 「六課のメンバーが卒業した時に思ったんだ。ああ、皆すごいなぁって」
 「そうだね、わたしたちの頃より大分、良い教育課程になってきてると思うよ」
 「さすが、専務教官。言うことがちょっと違うね」
 「ありがと」

 「ヴィヴィオ、最近どうかな。元気にしてる?」
 「あいかわらず。フェイトちゃんにたまに会いたがるの、だだこねちゃって大変」
 「嬉しいな、ヴィヴィオはまだ甘えん坊なのかな、でももうあっという間に大人になっちゃうのかな」
 「ずっと子供のままだよ・・・・」
 「どうしたの」
 「わたしもフェイトちゃんと話がしたい、遊びたいし、色んなところへ一緒に行きたい」
 「うん」
 「あーあ、これって黙ってようと思ったのに、言っちゃった。
  やっぱり、フェイトちゃんは大人だね。言いたいこととか我慢できるのかなって思うよ」

 「なのは、覚えてる?」
 「なあに?」
 「昔、なのはの家に遊びに行ったときに、同じことを言ってたよ」
 「そうなの、覚えてないなあ」
 「そんなんだ、それじゃあ・・・
  わたしが勘違いしてなのはを傷つけちゃわないように、色んな気持ちを教えてね」
 「うん。私はまだまだ子供みたい、たっぷりフェイトちゃんに甘えちゃおうかな」
 「今も、昔も変わらないよ。私は今のなのはが好きだよ。そのままでいてね」
 「なんか、照れくさいよ」

 「素直でやさしいなのはは、ずっと変わってないから」
 「やさしいは・・・違うかもしれないよ?
  実はにっこり笑って実は怖いって教え子達に噂されてたりして」
 「まあ、たしかに。なのはは厳しいよね、うん」
 「あれ、否定してくれないの?ひどいなあ、フェイトちゃん」
 「これからは、もう少し多くヴィヴィオに会いに行くよ」
 「そうしてもらえると、助かる。本当ああなっちゃうと、誰も手がつけれないの。それに・・・」
 「それに?」

 「わたし達はフェイトちゃんがいなくちゃだめみたいなの」


2009、7/13


 「ごめんなぁ、なのはちゃん。訓練中に呼び出してもうて」
 「ううん、どうしたの」
 「なのはちゃんが出した書類案が通ったから、早く伝えたかったんよ」
 「本当!?嬉しい!」
 「まあ、向こうもいつか手を付けなあかん議題みたいやったし。案外すんなり通ったみたいやね」
 「これで、少し動きやすくなると良いね」
 「そやなあ、すぐにはいかへんと思うけどな。あれ、なのはちゃん。なんか元気ない?」
 「え・・・」
 「フェイトちゃんやろ?」
 「あ・・・」
 「また喧嘩かぁ」
 「う・・・・・・・」
 「二人の仲なら仲直りなんて簡単や、違うの?」
 「もう、はやてちゃんったら」
 「こういう場合、なのはちゃんは急にへたれてしまうから、聞くよりこっちの方が手っ取り早いんよ」
 「こういう時こそ、魔法で解決できたらいいのに」
 「なに言うてるの。とっておきの魔法の呪文があるの、知ってるやろ」
 「どんな呪文?」
 「えっとな・・・・・・」


 「こんばんは、フェイトちゃん。ちょっといいかな」
 「あ、なのは・・・待って・・・今・・・料理してるの」
 「うそでしょ」
 「はい、嘘です。ごめんなさい」
 「ふふっ、わかりやすいんだから、フェイトちゃんてば」
 「なのは、ご機嫌だね」
 「そう?フェイトちゃんはどう」
 「わかってるくせに・・・意地悪だ」
 「今日、高町なのはは魔法をかけようと連絡しました」
 「そんなに怒ったの!?」
 「何か、勘違いしてるでしょ」
 「だって、なのは」
 「とりあえず、バルディッシュは置いて大丈夫だよ」
 「ここに来るんだと・・・」
 「しないったら!幾らなんでも、
  レイジングハート使って、フェイトちゃんがいる寮までけんかしに行かないでしょ」
 「そうだよね・・・私どうしちゃったんだろ」
 「そんなに怒ってるように見えたかなあ」
 「なのはは特別だから、なんでも大げさに見えちゃうんだよ」
 「そっか・・・」

 「私、なのはに嫌われたくないんだ」
 「うん・・・・ごめんね、昨日は」
 「私の方こそごめん」
 「はやてちゃんの言うとおりだった。
  今日相談したら、すぐに仲直りできるでしょって言われちゃった」
 「そうだね、良く考えたらすぐにできたんだよね」
 「フェイトちゃんはわかるの?」
 「私達は喧嘩しても、お互い大切に想ってるからね」

 『わたしたちけんかしても、お互い大好きでしょ』


 「なのは、今なんていったの?」
 「うん。やっぱり、どんな魔法だってフェイトちゃんには叶わないなって言ったんだよ」

なのフェイリンク



思いつきで描いていったなのフェイSS集です。誤字脱字があったら教えてください。
そして、お話の感想が胸に出てきたのなら、想いを貯めておくのは身体によくないから、
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